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絵をみることで、世界をみている
『Deer』は野生のシカの世界を描いたモノトーンの画集です。ミヤギさんの描くシカの世界は、リアルであると同時に抽象性が高く、鹿という生きものをカタチとしてではなく、精神のありようとして捉えているように見えます。
だからシカという動物が、いったいどんな動物なのか、日々どのように暮らしているのか知りたければ、この『Deer』という本がヒントになります。
ミヤギさんは「森の神の使い」という言葉を、シカに当てていました。
シカを描くことが、シカの棲む森につながり、森を描くことが、シカを始めとする生命の存在につながっている。『Deer』からはそのような世界観が見えてきます。
絵は、描く人の頭の中にある世界の見え方を、言葉をつかわずに伝える手段。受けとる方法。一種のテレパシーのようなものです。
『Deer』は、たくさんのシカの絵をはさんで、作家とデザイナ ーの間で、言葉を介さない理解と承認(賛同)が行き来して完成した作品のように見えます。立ちのぼる余白と静寂の感覚が、そのような軌跡を想像させます。
絵をみることは、わたしたちが生きているこの世界を、作家の目を通して精緻に見直すことなのかもしれません。
大黒和恵(Web Press 葉っぱの坑夫)