Su- (Design Office)

4-4-302 Nishiyama-cho
Ashiya-shi, Hyogo
659-0083, Japan

E-mail. info@su-u.pw

https://su-u.pw

ミヤギユカリ「deer」

絵をみることで、世界をみている

『Deer』は野生のシカの世界を描いたモノトーンの画集です。ミヤギさんの描くシカの世界は、リアルであると同時に抽象性が高く、鹿という生きものをカタチとしてではなく、精神のありようとして捉えているように見えます。

だからシカという動物が、いったいどんな動物なのか、日々どのように暮らしているのか知りたければ、この『Deer』という本がヒントになります。

ミヤギさんは「森の神の使い」という言葉を、シカに当てていました。

シカを描くことが、シカの棲む森につながり、森を描くことが、シカを始めとする生命の存在につながっている。『Deer』からはそのような世界観が見えてきます。

絵は、描く人の頭の中にある世界の見え方を、言葉をつかわずに伝える手段。受けとる方法。一種のテレパシーのようなものです。

『Deer』は、たくさんのシカの絵をはさんで、作家とデザイナ ーの間で、言葉を介さない理解と承認(賛同)が行き来して完成した作品のように見えます。立ちのぼる余白と静寂の感覚が、そのような軌跡を想像させます。

絵をみることは、わたしたちが生きているこの世界を、作家の目を通して精緻に見直すことなのかもしれません。

大黒和恵(Web Press 葉っぱの坑夫)

カテゴリー: | 投稿日:2022年11月8日